ラスボス聖女に転生してしまいました~婚約破棄され破滅する運命なので、生き延びるため隣国で錬金術を極めます~
(周りの人たちも見た目が日本人離れしている。ここはどこなのかしら)

 うーん、教会っぽい見た目のような気がする。

 無神論者の自分には馴染(なじ)みがないが、漫画やゲームでこんな感じの建物、見たことあるし……。

 目の前の青髪の子もそうだけど、周りの人もコスプレ衣装を身に(まと)った異国の人って雰囲気だし、一体どうなっているんだろうか。

「お姉様、このシェリアを。妹の名前を本当にお忘れですか?」

「シェリア? ううう、あ、頭が……!」

 その名前を聞いた瞬間、私の頭に再び鋭い痛みが走った。

 そうだ。この子はシェリア。シェリア・エルマイヤー……私の一つ年下の妹だ。

 なんで忘れちゃってたんだろう。さっき頭痛とともに別人の記憶が頭の中に入ってきて、ごちゃついたせいだろうか。

(でもトラックに轢かれた私も確かに私の記憶としか思えない。まさか前世の記憶?)

 頭痛が落ち着いてきた私はゆっくりと思考を巡らせて、二つの記憶について考えてみた。

 魔術師の名門、エルマイヤー伯爵家に生まれ育ったのが今の私。

 激務の中、注意力が散漫になってトラックに轢かれて死んでしまったOL。それが前世の私。

 そう考えればこの状況に一応説明はつく。まるで漫画みたいな話だけど、そうとしか考えられないのだから仕方ない。

(しかも……、前世の記憶が戻ったから気が付いたけどこの世界ってまさか!?)

 さらに私は驚くべき事実に気が付いて動揺が隠せない。

 ここ、「陽光のセインティア」の世界だよね!?

 私は死ぬ直前に続編を楽しみにしていたゲームのタイトルを思い出す。

「陽光のセインティア」は魔法と錬金術によって魔道具と呼ばれるアイテムを強化して、シナリオを進めるファンタジーゲームである。

 私の妹であるシェリア・エルマイヤーはそのゲームの主人公で、聖女として国を守るという要職についている設定だった。

 つまり私は過労死寸前のOLから主人公の姉というポジションに転生したのである。

(それだけならよかった。よりによってリルアなんかに生まれ変わっているなんて)

 主人公の姉というだけならなんてことなかった。ゲームの世界で暮らしてみたいと思ったこともあるし、それなりに楽しい人生が送れるかもしれないとも思えた。
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