聖女、君子じゃございません
「……まさか、王宮の部屋もこんな惨状のままにしてきたんですか?」

「まっさかぁ! さすがに侍女を完全シャットアウトはできなかったし、実に綺麗な状態だよ! その辺は心得てますって!」


 つまり、この部屋の惨状は確信犯らしい。俺はこめかみに青筋を立てた。


「……って! 一体なにをしてるんですか!」

「何って……着替えだけど。ご飯食べに行くんでしょう? それに、ちゃんとお仕事しないと王宮にチクられちゃうし」

「そんなことを言ってるんじゃありません! 着替えは俺が部屋を出てからにしてください! 俺を何だと思ってるんですか?」

「せいじんくんしぃーー」


 アーシュラ様はニカッと歯を見せて笑いつつ、寝間着を脱ぎ去る。その下にも服を着ていないわけではないが、明らかに薄布だし、鎖骨や腕が剥き出しになっている。普段見ることのできない真っ白な肌から、目が離せなかった。


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