地味子なのに突然聖女にされたら、闇堕ち中の王子様が迎えにきました
そんな生徒達は混乱しながらも、ガイアの面々はメンフィルと世界の大体の事情を知り、それでレオと対なのかと納得していた。
薄々世界の異変も感じ取っており驚きも少なかった。
しかし、そうなるとイヴは何が何でもメンフィル側で庇護したいはず。レオと対だからと言っても、そう易々外へ出さずここへ匿うはずだ。
「……っ!」
三兄弟が背後から感じた気配、あぁやっぱりアンタかと。いち早く気付いたグレンが声をかけた。シルヴィア女王の傍らでずっと、謎のローブの男がこちらの様子を見ていたのは分かっている。
「もしかして俺達、謀られましたか?昨日の梟屋も仕込みですか?」
まさか、手のひらで転ばされていただけだったか、とグレンは苛立った。タダ働きなんて絶対にゴメンだ。
「そう気を悪くしないでくれ、長男くん。君達のお父上ヴィンセントには通してある話だよ」
低く響く声、正式な場で何度か顔を合わせたことはあるが、戦いの場でこうやって会話をするのは初めてだ。
「しかし、君達の戦い見事なもんだったよ。これでまだ本気じゃないんだから怖いよねぇ。うちの若い子達がかなうかどうか。一戦試しに交えてみたいものだけど」
「まるで、戦う未来があるような言い方をしますね」
たらっと一筋冷や汗をたらしながら、答えるグレン。相手は3人束になってもかなわない。ここで第二ラウンドだけは絶対避けたい。
「そうだ、僕に勝ったらあの子連れて行っても良いって言ったらどうする?」
その提案に、グレンは目を見開いて思わず後ろを振り返りそうになったのを耐えた。
「……いいですよ、ちょうど今体の調子が良いんで。アレ、使っても良いなら、見せますよ」
黙ったグレンの代わりにレオが淡々と答えると、察したアベルが臨戦体制に入る。
普段から短気な2人だったが、戦う口実ができて更に歯止めがきかない。止める間もなくすでにやる気満々だ。
しかし、いつも止める係の長男グレンでさえ怒りをやり過ごせないでいた。血を分けた三兄弟、何度となく生死の境を彷徨うような死闘もあった。
言葉を交わさずとも分かる。3人思うことは一緒だった。
手のひらで転がされて終わりなんて、ガイアの三兄弟がナメられたもんだ、と。
ブチギレた2人の弟に同調するかのように、グレンの目にうっすら印が宿ろうとした時、
「長男君までムキになっちゃダメじゃない、誰が止めるのよ。君達ブチギレたら手がつけられないんだから」
そう笑いながら、薄れていく気配。しかし声だけはしっかり聞こえる。
「僕と戦わなくたってイヴは君の元へ行ってもらうよ。あの子も君もまだ不完全なんだもの」
それだけ言い残して完全に姿も気配もなくなった。三兄弟が緊張をとくと、ジゼルが心配そうにグレンの側へ寄り添った。
「今のはダメ、二度としないで」
ジゼルは普段はグレンの前だと部下ぶって、敬語でぶりっ子する癖に、本気で戦い始めるのかと思ったのか思わず昔馴染みのタメ口が出た。
珍しく声を震わせるジゼルに、
「……悪かった」
そう言ってぽんとジゼルの頭へ手を置いた。