その溺愛は後出し不可です!!

 スーパーに立ち寄り、朝食の材料と酒とつまみを調達した。
 その間、昴は籠を持ち反対側の手で果歩の手を掴んで離そうとしなかった。まるで本当にデートをしているよう。
 朝食を作る代わりに夕食はミシュランで星を獲得したこともある有名なレストランのデリセットをデリバリーした。
 グラスでシャンパンを飲みながら、大きなテレビで流行りの恋愛映画を見ながら寛ぐ。
 手と手を絡み合わせた上に、昴が肩にもたれかかってくると、映画の内容が途端に頭に入ってこなくなる。
 あっという間にエンドロールが流れ、再生が終了すると、昴はリモコンでテレビの電源を落とした。
 映画を二本鑑賞し終えた今、すっかり陽が落ちリビングの大きな窓からは綺麗な夜景が見えている。

「そろそろシャワーでも浴びるか」

 なぜこうもシャワーという単語が艶かしく聞こえてしまうのだろう。果歩は一気に身体を硬直させた。

「心配しなくても今すぐ取って食ったりしない」

 今すぐではなくいずれは取って食われてしまうということ?深読みしすぎ?
 ノコノコこんな所までやってきておいて、まだ結婚は冗談だと思いたいのかと自分に呆れてしまう。

「先に浴びてくるな。次は一緒に入ろう」
「入りません!!」

 果歩をからかい満足した昴はシャワールールへと消えていった。
 緊張で喉がカラカラになり、キッチンにある冷蔵庫に向かう。スーパーで調達した水を取り出し、喉を潤していく。
 何もかもが夢のようで、まだ信じられない気持ちでいっぱいだ。

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