円満夫婦ではなかったので
結局、夫は訪れなかった。

来られないと、たった一言のメッセージすらない。

(見かけは優しそうだけど、実は冷たい人なのかも)

過去の自分は彼のどんなところを好きだと感じたのか。

全く覚えていない為分からないけれど、今はそれでよかったと思う。

彼に対しての気持ちがあったら、こんな状況が悲しくて仕方ないだろうから。

ふと思い立って瑞記とのメッセージ履歴を遡ってみる。
やり取りを見たらどんな夫婦なのかある程度分ると思ったからだ。けれど。

「あれ……」

ここ一カ月の履歴しか残っていなかった。

機種変更をしているから、その際何等かのトラブルがあり消えてしまったのだろうか。

念の為、家族と友人とのトークも確認してみる。やはり過去の履歴は残っていなかった。

(あーあ……バックアップ取っていたらいいんだけど、分からないな)

記憶だけではなく記録もないなんて、あまりに心もとないではないか。

園香は重苦しい気持ちに陥っていたが、しばらくすると気を取り直してメッセージを作成した。

【お仕事お疲れさまです。メッセージを送って貰っていたのに、確認するのが遅くなってごめんなさい。今日来るということだったけれど、来られないようなので何かトラブルが有ったのかと心配してます】

夫に送るにはあまりに固く遠慮がにじみ出た文面。

けれど、瑞記に対して慣れなれしい態度を取るのは無理だと感じるのだから仕方がない。

内容をもう一度確認してから送信する。

どっと疲れが襲って来て、園香はベッドに倒れ込んだ。
まだ怪我は癒えていない。体の痛みは続いているし、すぐに疲れてしまうのだ。

(なんて返事が来るのかな)

目を閉じながら考えたけれど、何一つ思い浮かぶことはなかった。
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