円満夫婦ではなかったので
◇◇

希咲はバタンと少し乱暴な音を立てて閉じたドアに、恨みが籠った視線を向けた。

思い通りにならない状況に苛立ちが募る。

(なによ、あの態度は!)

あまりに酷い態度ではないだろうか。

もしかしたら後悔した彼が出て来るかもしれないと、その場でドアが開くのを待っていたが、しばらくするとその場を離れ、足音荒く階段を下った。

契約結婚だけあって希咲と夫の部屋は離れている。名木沢が二階で希咲は一階だ。

一階を希望したのは希咲だ。時間を気にせず出入りするのに便利だからだが、今は夫の出入りをチェックするのに都合がいい。

自室は広い和室二間を改装したものでかなり広い。

アンティーク家具も箪笥から溢れそうな服も希咲が好むものを揃えている快適な空間だ。

物質的に満たされ、自由もある。こんな生活を与えてくれる名木沢は、希咲にとって理想的な夫だった。

半年前までは。

夫に対して違和感を覚えるようになったのは、いつ頃からだっただろうか。

希咲は部屋の中央で存在感を放つ大きなソファに、どさりと座り込んだ。

目を閉じると、つい先ほどのやり取りが浮かんできた。

(……やっぱり清隆の態度は前と違うよね)

希咲を見る目が、無関心から苛立ちに変化した。
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