円満夫婦ではなかったので

初めは仕事が上手くいかず不機嫌になっていると思っていた。しかしそんなことで離婚を口にするはずがない。

清隆は決して希咲を捨てられないのだから。

(でも、清隆は今日、あの女と会っていた)

――富貴川園香。

瑞記の妻で、希咲が大嫌いな女。

彼女を初めて見かけたのは、希咲が美倉空間で働いていた頃。仕事でソラオカ家具本社を訪れたときだった。

ただすれ違っただけなのに、初めから気になり印象に残る相手だった。

その後も、直接関わる機会はなかったが、打合せに行く度に彼女を見かけた。

特別に目立つ行動をしていた訳じゃない。真面目に働いていたし、一見態度も控え目。

けれど周囲は彼女に対して、かなり気を遣い接していた。

明らかに他の社員と待遇が違う。

希咲は昔から、そういった人の微妙な態度の違いを見抜くのが得意だった。

だから園香に関心を持った。

ちょうどその頃、ソラオカ家具の担当者とプライベートでも付き合い始めたので、彼女の情報を簡単に聞くことが出来た。

『ねえ、ちょっと気になる人がいるんだけど』

簡単な特徴を伝えただけなのに、答えがすぐに返ってきた。
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