円満夫婦ではなかったので
なぜいつも一緒に行動しているのかと問われ、ビジネスパートナーだからと説明した。
しかし園香は度が過ぎた関係だと言い、少しも希咲を認めてくれない。
本来なら一番瑞記を理解し支えるべき園香が、顔を合わす度に瑞記を責める。
終いには希咲とは仕事以外で一切付き合わないでくれと言い出して、その時は大喧嘩になってしまった。
少しキツイ言葉をぶつけたら園香は大げさなくらい落ち込んでいたけれど、謝る気にはなれず、それ以来ぎくしゃくした関係が続いていた。
「希咲と浮気してるなんて低俗なことを言われたら、僕だって頭に血が上るよ。それでもきちんと僕たちの関係を出会いから丁寧に説明したんだ。希咲が僕にとってどれほど大切なパートナーなのかもね。でも全然分かってくれない。それどころかどんどん意固地になっていく」
彼女があんな捻くれた性格だったとは、結婚前には少しも気が付かなかった。
瑞記の愚痴を黙って聞いていた希咲は、ふっと目元を綻ばせた。
「瑞記のそういうところ、奥さんは分かってないんじゃないの?」
希咲が楽しそうに、瑞記によりかかってくる。
「悪気なく傷付けるのが上手」
彼女はなにかを呟いたけれど、小声で上手く聞き取れない。
「ごめん、もう一度言ってくれるか?」
「近い内に私も奥さんのお見舞いに行くって言ったの。今度は疑われる前に挨拶しておいた方がいいでしょう?」
「そうか。初めから園香に希咲を紹介しておけばよかったのか。いいアイデアだ。園香にも話しておくよ」
瑞記は顔を輝かせて、妻へのメッセージを作り始める。
希咲の助言に従えば、何もかもが上手くいくような気がしていた。