円満夫婦ではなかったので

瑞記が怒ったのは、園香の態度が癇に障ったからのようだった。

ただそう分かっても、謝って仲直りする気にはなれなかった。

(だってあの人ってすごく無神経なんだもの)

彼は数日ぶりに見舞いに来たと言うのに、園香の身体を気遣うそぶりも見せず、いきなり自分の用件を話しはじめた。

同僚を連れて来て園香に会わせたいと言い出したのだ。

『怪我が原因で園香が記憶喪失になったと説明したらとても心配していたんだ。それに今後のこともあるから挨拶をしたいって。なるべく早くがいいんだけど、いつがいいかな?』

瑞記はなぜか園香が喜ぶと思っているようだったが園香の内心はその真逆。

瑞記に反感を覚えていた。

職場の同僚に家族の体のデリケートな問題を軽々しく話す口の軽さ。加えて園香の都合を確認しないうちから顔合わせを決定事項としていること。

入院中でメイクどころか、基本的な手入れも出来ていない状況で、どうして夫の同僚に会えると思うのか。
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