円満夫婦ではなかったので
「いきなり夫とか言われても戸惑うよな。でも本当に僕たちは夫婦なんだよ」

「そうなんですね……ごめんなさい、思い出せなくて。あの、私たちはいつ頃結婚を?」

「ああ、そうだね。説明しないと。まずは自己紹介からだな」

彼は園香に寂しそうに微笑みかける。

「僕は冨貴川瑞記。年齢は三十二歳。二年前にデザイン関係の会社を立ち上げて、経営はそこそこ上手く行っている。園香とは今から一年前にお見合いして、半年前に結婚したんだ」
「お見合い?」

話の腰を折らないようにと大人しく聞いていた園香だが、思わず声をあげてしまった。

それくらい意外だったのだ。

(私がお見合いをしたなんて、どういう心境の変化?)

一年前の園香は仕事が楽しくて、お見合いどころか結婚にすら興味がなかった。付き合っている相手もいなかった。

「そうだよ。園香のお父さんと僕の父が親しくてね。仕事上でも関係があったので、縁談が決まったんだ」

「……そうなんですか」

自分が父親の言うがまま見合いをしたなんて驚きだ。

(頼み込まれてお見合いをした結果、彼を好きになったのかな?)

「あの……」

「どうかした?」

「ええと、私はあなたのことを何て呼んでましたか?」

「ああ、瑞記って呼んでたよ」

園香は頷いた。
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