円満夫婦ではなかったので
「急に別れたいって言い出して、長く付き合って結婚も考えていたからショックでね」
「それは……」
園香は言葉に詰まり、目を伏せる。
青砥は今年三十一歳だから、二十六歳から付き合っていたということだ。
思い出だって沢山あるだろうし、大きな衝撃を受けるのは当然だ。
とは言え、園香は彼女の恋人について何も知らないし、これまで相談を受けていた訳ではないから、なんと言って慰めるのがいいか迷ってしまう。
「確かに最近喧嘩ばかりで上手く行ってなかったんだけど、話し合いもなく別れを決めていて……頑固なのは知っていたけど、私にまであんなに頑なになると思わなかった」
青砥はグラスに残っていたワインを煽った。
彼女は慰めの言葉を求めていると言うより、ただ気持ちを吐き出したいように見える。
「……喧嘩が多かったと言うのは?」
「半年前、彼の会社に中途入社した子が原因。偶然だけど高校のときの後輩だったの。思いがけない再会に盛り上がって一気に仲良くなっちゃって」
思った通りで青砥は詳細に語り始めた。園香は黙って相槌を打つ。