円満夫婦ではなかったので
美しく盛り付けられた前菜に青砥の関心は移ったようでほっとした。
(事故のことはまた後で考えよう)
園香は頭を切り替えて、次々運ばれてくる視覚も味覚も楽しませてくれる料理を楽しんだ。
ワインもとても美味しくて、大満足だ。
「ああ美味しかった。このワインも気に入った」
青砥も同じようだった。園香よりも酔いやすい体質のようで頬を赤く染めている。
「私もいいなと思いました。他のお客さんが会計でボトルを受け取っているのを見たんですけど、購入出来るんですかね?」
それなら買って帰ってもよさそうだ。
「あ、あれはね、プレゼントだよ。コース料理についているから私たちも貰えるはず」
「そんなサービスがあるんですか? 楽しみですね」
「うん。今日はいい感じで酔えてるし、家で飲み直そうかな。嫌なことがあったときは発散しないとね」
「嫌な事? 何かあったんですか?」
仕事の関係かと思ったので園香は気軽に尋ねてしまった。すると青砥はほおと溜息をつき眉間にシワを寄せた。
「実は先週彼と別れたの」
「え……そ、そうなんですね」
(プライベートの話だったんだ)
踏み込んだことを聞いてしまっただろうかと心配になる。
「聞いてくれる? 彼とはもう五年付き合ってるんだけど……」
けれど青砥は気を悪くするどころか、早口で語り始める。