ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
私がシートベルトをしめ終わるや否や、車は少しの揺れもなく走り出し、スムーズに加速していく。
さすが国産ブランド最高グレードの高級車。
ということは、この居心地の悪さの原因は車ではないのだろう。
皮肉っぽく考えていると、ルームミラー越しに運転席に座るその人と目が合った。
「新しい会社の方は、いかがでございますか?」
前職を辞めて転職して、もう2年経ちますが、という不満はおくびにも出さず、大人しく首を振る。
「特に変わりはありません。みなさん、よい方ばかりですし」
毎回毎回判を押したように同じ質問をされるが、私のことを心配してくれてるわけじゃない。他に、沈黙を埋める適当な話題が見当たらないだけ。
「それで? 今日はどういう用件でわざわざ?」
不毛な会話に嫌気がさした私は、さっさと本題を聞いてしまおうと切り出す。
塩沢さんは鏡越しにそんな私をチラリと見てから、特に表情を崩すわけでもなく淡々と続けた。
「社長からのお言葉をお伝えにまいりました。本日夜、終業後にご実家の方へ寄るようにと」
「……それだけですか?」
「それだけです」
大真面目に言わないでほしい。
この令和の時代に、他の伝達手段はなかったわけ?