ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
思わずムッとした表情を向けると、それを撥ねつけるように冷淡な声がした。
「――それだけですが、わたくしからも一つ」
「え?」
「一人暮らしをされて、解放的な気分になるのはわかりますが、朝帰りというのはいかがなものでしょうか」
「なっ……」
“朝帰り”。
思い当たることがありすぎるキーワードに、ギョッとした。
なぜこの人が知ってるの?
GPSでもついてるのかと探しかけ――しかし、すぐに脱力した。
たぶん中田さんが教えたんだ、と思いついたから。あの人がエントランス脇の管理人室で夜通し飲んでいることは、アパートの住人ならみんな知っている。タクシーから降りてくるところを、見られていたんだろう。
もしくは、あらかじめお金でも渡して見張らせていたのかもしれないな。
あのワンマン社長の秘書を務める男だ。
買収くらい平気でやりそうじゃないの。
私はそっと、唇を噛んだ。
「そのようにふしだらな真似は、社長のお顔に泥を塗る行為です。ご自身のお立場を十分お考えになっていただき、今後は相応しい行動をお願いいたします」