ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
17. 貴志side 御曹司は我慢ができない。


分厚いカーテンの隙間から、沈んでいく太陽の最後の光が微かに差し込んでくる。

せっかくの土曜日を無駄にしてしまったなと重たい頭のどこかでぼんやり考え、ソファの周りに散らばる空き缶を眺めた。

締め切ってクーラーをかけっぱなしにしてるから、アルコール臭も相当ヤバいんじゃないだろうか。自分ではもはやよくわからないが。
週明けに来る清掃スタッフには面倒をかけてしまうな。
申し訳なく思いながら、ぬるくなった缶ビールを水のように再び呷った。


自分をコントロールすることは得意だった。
どんな場面でも緊張なんかしたことはないし、プライベートでトラブルがあっても仕事のパフォーマンスに影響が出たことはない。いや、なかった。今までは(・・・・)

項垂れたまま、髪をガシガシとかき回した。

仕事はちゃんとしてる。ミスはしてない、はず。まだ。
だがそれは、ユキをはじめとする周囲のサポートのおかげだ。

視野が狭くなり、余裕がなくなっているのは確かだ。つまりギリギリだってこと。
夜もよく眠れず、そのためか、前と同じ量の仕事をこなしているだけなのに疲労感がすごい。

それもこれも、たった一人の女のせいだとは……

手の中の缶を、一息に握りつぶす。

まさか自分が、フラれたくらいでここまで落ちるとは思わなかった。

「……情けねーな……」

惨めな声がリビングに響き、消えていった。

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