ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

3週間前、オレは織江にフラれた。

――じゃあ認めるのか。妹の見合いと知っていて、写真をすり替えたと。オレとの結婚が、金が目当てで、オレに近づいたと。

――……はい。

オレをまっすぐ見て彼女が頷いたあの場面が、頭から離れない。


信じられなかった。
信じたくなかった。

けれど、彼女が複数の男と飲み歩いていたらしいことは、あの写真が証明している。合成写真には見えなかったし、妹に追及された彼女の顔は明らかに動揺していた。

オレに乗り換えるために別れた元カレ、っていうのは、佐々木のことだろうか。
無理やり別れたから相手も納得してなくて、以前うちの会議室で見かけたような険悪な関係になってしまった?

そうまでして乗り換えたのは、佐々木やパパ活の相手より、オレの方が金づるとして有望だと思ったから? 処女をくれてやってもいいと考えるほどに?

彼女に声をかけられてオレたちは関係を持った。それは事実だ。
つまり最初からずっと、仕組まれていたわけか。

素性を隠しミステリアスな空気を装って近づいて、オレに興味を抱かせる。自分の身体(とっておきの餌)でオレを釣り、続けて気のない素振りで『誰でもよかった』と嘯いてみせる。そうやってアメとムチを使い分け、自分の気持ちを決して明かさないまま、オレの中の独占欲を煽って――。
見合い写真をすり替えたのは、最後の仕上げ。運命の出会いでも演出しようと思ったのか。

なるほど、大した演技力だ。
処女だったから男には慣れていないと、自動的に思い込んでしまった。
なんのことはない、実は処女を一番高く買ってくれる相手を探していただけだったなんてな。

見事じゃないか。そうとも知らずまんまと彼女に溺れてしまったオレは、まるで滑稽なピエロだ。

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