ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「どうしたんですか? しっかりしてくださいっ貴志さ――」
何が起きているのかさっぱりわからず、ただ目の前の身体を揺さぶる。
すると――手にまとわりついてきたのは、ぬるりとした気味の悪い未知の感触で。
反射的に視線をそちらへやった私は、真っ赤に染まった自分の手に息を飲んだ。
「ち、違うっ……おれは悪くないっ違うんだ、おれはただ……っ」
パニック気味に叫んでいるのは、ヨレヨレのTシャツとジーンズを着た、別人のようにやつれた佐々木君。
その手の中からナイフが、べっとりと血の付いたナイフが、音を立てて地面に落ちる。
カラン……
その音が再生ボタンを押したみたいに、思考回路の中に様々な情報が一気に雪崩れ込んできた。
泣いてる佐々木君、
地面に落ちたナイフ、
倒れて動かない貴志さん、
真っ青な顔と、どす黒く色を変えていく上質のスーツ……
「……っぃゃああああああっっ!!」