ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

彼に向き合い、私はもう一度丁寧に頭を下げた。

「貴志さん。お母さんの前でもう一度言わせてください。あの時は助けていただいて、本当にありがとうございました」

全身全霊で感謝してるというのに、「やめてくれ」と彼はそっけない。
「情けなさが倍増する」

どうやら彼は、カッコよく無傷で取り押さえたかったみたい。
奇跡的に臓器を傷つけることもなく、数週間ほどで退院できたとはいえ、とっさに自分の身体を盾にするしかなかったこと、そして意識を失ってしまったことが相当悔しいらしい。格闘技を習おうかと真剣に検討しているそうだ。

「ま、そのおかげで織江の本心が聞けたし、結果オーライだけどな」

ニヤリと意地悪く流し見られて、頬が熱くなった。


――好きですっ好き、貴志さんが大好きです!

――はいっはい、しましょう、結婚しましょう! ずっと傍にいてくださいっ。


もちろん本心ではあるけど、勢いというか、告白にカウントされるのかは微妙なところ? でも貴志さんに言わせると“言質は取った”ということらしく、周囲にも早々に報告されてしまった。

確かに、あんなことでもなければ、自分の気持ちを正直にさらけ出すことはちょっと難しかったかもしれない。

「それに、佐々木の証言は大いに役立ったしな」

貴志さんが続けた言葉に、私も頷いた。

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