ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

残念ながら、それは事実だった。

オレは今現在リーズニッポンの副社長で、親父は社長を務めているが、オレたちがこの地位についたのは、たった2年前のことだ。

前社長の最上悦子(もがみえつこ)が病気療養のため辞任したのが2年前。
後任にと彼女が指名したのが、遠縁で、関連子会社の社長でもあった村瀬博人(むらせひろひと)――オレの親父――だったのだ。

親父は、自分の会社を長男(兄貴)に譲ると、自身はリーズニッポンの社長に就任。次男のオレを副社長に就けた。

まさに青天の霹靂、ってやつだった。

それまで、御曹司とはいえ気楽な次男坊で、役員に名を連ねているとはいえ実質ただの営業マンにすぎなかったオレが、いきなりこんな大企業の副社長だからな。

自分から望んだことじゃないが、棚ボタ的に今の地位を手に入れたオレを認めていない役員連中も少なからず存在する。

今の所、必死に努力したかいあって、“サラリーマン副社長”とか“余所者”とか、そんな陰口はもう聞こえないけれど。

将来、社長就任の際の内輪もめを回避するためにも、引き続き実績を積み上げていかなければならない。

そう、恋愛なんて今のオレには邪魔なだけ。
一人の女なんかにこだわってる暇はないのだ。


「この話はもう終わりでいいだろ。さっきも言ったけど、オレは彼女に落ちてもいないし惚れてもいないんだから」

自分に言い聞かせるように繰り返して、パソコンを立ち上げた。

そう、ただ気になってるだけ。
彼女がオレを誘った理由を、知りたいだけ。

それ以上の興味なんて、ない。
全く。


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