ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
もっともらしく話しながら、まるで自分がそれを望んでいるような気がして、ドキリとした。
「何も言って来ないなら、それはそれで構わないし」
急いで付け加え、窓の外の景色へと視線を泳がせる。
高層階からのジオラマのような眺めは見惚れるにふさわしい素晴らしいものだったが、ユキは騙されなかった。
「なんだかさっきから気になるのよねぇ。いろいろ、いつもの貴志と違う。まさかと思うけど……彼女に落ちたとか?」
「は!?」
とっさのことで、動揺のままに振り向いてしまい、ネコみたいに好奇心満々な丸い目とぶつかった。
「まっまさか。んなことあるわけないだろ。ただ気になってるだけだ」
「……ふぅん、気になって、ね。ほうほう、へぇええ」
チッ、全然信じてないな。
「まぁともかくね、女性スキャンダルについてはこれからも注意してくれないと困るわ。中条瑠衣の件も含めてね」
「あれは、っていうかあれも、オレじゃない。ちゃんと説明しただろ」
「はいはい、わかってるけどね。用心するに越したことはないわ。貴志は私と同系統で顔もいいんだし、ハイスペックな独身だし。自分がネギ背負った鴨だって自覚を忘れないで」
「オレは人間だ」
「……ものの例えよ」
「冗談に決まってるだろ」
ユキのムッとした顔を見て少しばかり溜飲を下げたオレは、革張りのプレジデントチェアに腰を下ろした。
「ま、そんなに心配する必要はない。新しいプロジェクトだって始まるし、じっくり恋愛なんかしてる暇はないからな。ユキだってわかってるだろ?」
思い出させるように言えば、彼女も「まぁ、ね」としぶしぶ頷いた。