ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

連れてこられたのは、役員フロアの片隅にあるこぢんまりした応接室。

「座って」

促されるまま私がおずおずソファの端に座ると、副社長は反対側にある窓へ寄り、もたれるように立った。

ようやく解放された手を胸の中に抱きしめ、ドキドキしながら彼を伺う。

やっぱりスタイルいいなぁとか、足長いなぁとか、パニック気味の頭ではそんな程度の感想しか出てこないけど。

ええと……これは……もしかして、事情聴取、的な感じだろうか。
何があったのか話せ、みたいな。

コンプライアンスを徹底してる大企業だもの、セクハラやパワハラの類があったとすれば許しがたい、ってことかも。

続く沈黙の中で考えていると、「話はできそうか?」とおもむろに彼が口を開く。
やはり、私が落ち着くのを待っていてくれたらしい。
急いで彼へと、顔を上げた。

「は、はいっ……あの、先ほどは助けていただいてありがとうございました。ちょっとびっくりしたんですけど、もう大丈夫ですので……」

「大丈夫なわけないだろう」
「え?」

「さっきのあいつは、知り合いか? “ヨリを戻す”どうのと言っていたし、元カレとか?」

なんとなく不機嫌そうなその口ぶりに驚くより前に、そんなところまで聞かれていたのかと青くなった。

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