ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「わかってるよ。まずは物理的な距離から縮めていく。今のままじゃ、接点がまるでないからな。毎日オレを意識させてやって、彼女の方からオレへ落ちてくるように仕掛けてやるさ」
オレばっかり彼女のことを考えてるなんて不公平だ。
向こうにも、同じくらいオレのことで頭をいっぱいにしてやらなきゃな。
見合いのことなんか、考えられなくなればいい――ドロドロと淀んだ胸の内の昏いつぶやきが聞こえたのかどうか、侑吾はこっちを意味深に流し見る。
「“自分の傍にいて欲しい”“自分のことをもっと意識してほしい”……ぜひ聞きたいんですが、これは恋愛感情ではないと?」
一瞬ぐ、っと言葉に詰まったが、すぐに「もちろん」と切り返した。
「当たり前だろ。気になってるだけ。ただの興味だ」
「ほぉお」
「ふーん?」
「っ、あのな、揃ってぬるい目で見るのは止めてくれないか。大体、一度寝たくらいで恋愛感情が生まれるはずないだろう」
「すでにズブズブのような気もするんだけどー」
「ユキ、何か言ったか?」
「いーえー」
なぜかこっちが劣勢のような気がして、無性に腹が立った。
絶対に、これは恋愛感情じゃない。
そんな簡単に恋なんぞ落ちてたまるか。
単に、あれほど相性のいい身体を抱いたのが初めてだったから、忘れられないだけだ。もう一度抱けば、興味も失せるだろう。
そう。きっと、そうなるはず――……
オレは自分にそう言い聞かせ、握り締めた両手にさらに力を込めたのだった。