雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「ねえ、成瀬君、私たちってどうやって始まったの?」

二杯目のビールを飲みながら聞いた。
十年ぶりに成瀬君に会ったけど、どんな始まりだったか覚えていない。

「どうやってって。大学で同じ講義を取っていて、それでバイト先も一緒で」
「ああ、DVDレンタルのお店! そういえば閉店後のお店でよく映画の話をしていたよね。成瀬君の解釈が面白かったんだ」
「そう。それで、どっちが詳しいかとか競ってさ」
「そうだった。成瀬君に負けたくなくて、レンタルしまくった」
「それで俺の家でも映画鑑賞会をしてただろう?」
「そうだね」

なんとなく思い出した。
成瀬君の家の方がバイト先に近かったから、帰りによく寄っていた。

「奈々子が三度目に俺の家に来た時、自然とそういう空気になってさ。それでキスして、そのまま奈々子のバージンもらった」

思い出したら恥ずかしくなる。
若気の至りって言葉が当てはまるような始まり方だったんだ。

「俺たち体の関係から始まったんだよ」

成瀬君が笑った。

体の関係から始まるなんて、雨宮課長とは絶対にありえない。

いくらなんでも私から雨宮課長を押し倒してって訳にはいかない。上司だし、会社で顔を合わせるし、拒絶された時の事を考えると……。

はあ。

深いため息が出た。
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