雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
ビール3杯でバーは引き上げた。

奈々子が危なっかしいから部屋まで送るよと、成瀬君がついてくる。酔っているから断るのも面倒くさい。だから成瀬君の好きにさせた。

302号室の前まで来た。

じゃあねと言おうとした時、私の手から成瀬君が鍵を抜き取る。酔っていたから反応できなかった。それからはあっという間に部屋に連れ込まれた。

6畳間にはふかふかの布団が敷かれている。その上にいきなり押し倒された。これはマズイと思った時、唇が重なって、背筋がゾッとした。

「いやだ! 成瀬君やめて!」

抵抗しても成瀬君はやめない。

「いいじゃないか。久しぶりに会ったんだし。奈々子、彼氏いないんだろ?」
「彼氏がいないからって、なんでこうなるの?」
「誘っただろ?」
「誘ってない」
「さっきバーで俺たちの始まりを聞いただろ? あれは誘いの文句にしか聞ここえなかった」
「勝手に解釈しないで! やめて!」

私の上に馬乗りになっている成瀬君に抵抗するけど、ビクともしない。

力では敵わない。

悔しい。

成瀬君が浴衣の上から私の胸に触れる。
あまりの嫌悪に悲鳴をあげた。

「やめて! いやだ!」

精一杯叫んだ。

隣の部屋の雨宮課長に声が届くように。
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