雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「奈々ちゃん、どうしたの?」

布団越しに雨宮課長の声がする。

「帰って下さい」
「え?」
「いきなり同棲って言われて、はい、そうですか、なんてなると思いますか? 私、雨宮課長に恋愛感情ないですから」

雨宮課長と恋人だなんてありえない。
イケメンで、頼りがいがあって、カッコイイとは思うけど……。

年だって7歳離れているし、課長は女性から人気もあるし、物凄く仕事ができるし、言ってみれば高嶺の花で、そんな高嶺の花が私のような仕事しか取り柄のない女を恋人にするなんて悪い冗談だ。

「やっぱりこれは悪戯なんでしょ? 雨宮課長が私と同棲なんてありえません。それに私、今は仕事の事しか考えられなくて、恋愛している場合じゃないんです。新しい部長がやって来て、宣伝部を引っ張って行かなきゃいけないんです」

今は阿久津部長に認めてもらう事しか頭にない。
今までの部長と違って、阿久津部長とは意見が合わない。だから私はもっと頑張らなきゃいけない。そんな時に恋人の存在は邪魔だ。

「新しい部長って阿久津部長の事?」
「そうです」
「そうか。奈々ちゃんの中では阿久津部長は来たばかりなのか。総務に異動した事は覚えていないんだね」
「総務に異動!」

びっくりして布団から顔を出すと、雨宮課長と目が合う。
思っていたよりも近い距離に雨宮課長の端正な顔があって、心臓が大きく跳ねる。

気まずくて再び布団を被ると、雨宮課長が「亀みたい」とクスクス笑う。
笑われているのが恥ずかい。

亀だなんて……。

頬にどんどん熱が集まってくる。
きっと赤面している。こんな顔、雨宮課長にさらしたら、今度はゆでダコだとからかわれるに決まっている。絶対に布団から顔を出すもんか。
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