雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
お母さんと帰りたい。

という言葉が喉の奥まで込み上がって来る。
だけど、私を見つめる雨宮課長の目が物凄く寂しそうで言えなかった。

そして、自分でも信じられなかったけど、課長と離れたくないと思っている。
本当はもっと課長と話したい。どんな風に私とつき合っていたの?って、聞いてみたい。

でも、聞く勇気がない。

「じゃあ、こっちへ」

雨宮課長に寝室に連れて行ってもらった。
大きな窓があって、窓の外にベランダがあって洗濯物が風に揺れている。

モデルハウスみたいにきちんとした部屋だと思っていたけど、ちゃんと生活感もあった。何だかほっとする。

ほっとしたら急に眠くなった。
さっき痛み止めの薬を病院で飲んだからかも。

雨宮課長に言われるまま、ダウンを脱いで、広いダブルベッドにゴロンと横になった。ふかふかの枕も、シーツも、毛布も掛布団も清潔感のある匂いがする。病院の匂いとは違う、洗い立ての洗濯物の匂いがして落ち着く。

「帰るね、奈々子」と、お母さんの声がした。
それから雨宮課長の低い声がして、何か言われたようだけど、眠くてわからない。

とにかく眠りたかった。
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