雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
半日がかりの防災訓練のあとは、今年の防災訓練についての報告書を任された。社内報に載ると聞いて気合いが入る。

パソコンに向かっていると、「風見係長、雨宮課長、いつ戻ってくるんですか?」というまりえちゃんの緩い声が響いた。

耳が敏感になる。

私も知りたい。

「まりえちゃん、雨宮課長に用事?」

風見係長が応える。

「はい。秘密の業務を頼まれていたので、その報告をしようと」

秘密の業務って何?

「専務に同行して出張って聞いたから、出社するのは明日だな」

専務に同行? 雨宮課長、今日出張だったんだ。
どうりで姿が見えないはず。

「そうですか。雨宮課長がいないとつまんないですね。はあ、総務部の癒しなのに」

「なんだ癒しって?」

風見係長がつっこむ。

「風見係長知らないんですか? 雨宮課長って女性社員の癒しになっているんですよ。何て言ったってイケメンですから。イケメンはみんなの宝です」

まりえちゃんの言い方が可笑しい。

ぷっ。

思わず笑ってしまう。

「あっ、中島ちゃんがツボった」

栗原さんに言われた。

みんなの視線が集まり、可笑しさがさらに込み上がる。気づけば目に涙を浮かべて笑っていた。
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