雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「奈々ちゃん、大丈夫?」

肩を掴まれて、ハッとした。
首を左に向けると雨宮課長が心配そうに眉間に皺を寄せている。
私の正面に座る先生も同じような表情をしている。

「中島さん、どうかされましたか?」

何かが過って、頭が痛くなった事を話した。

「精神的なストレスだとしたら無理に思い出さない方がいいのかもしれませんね」
「そんな! じゃあ、一生私は思い出さないままなんですか?」
「それはわかりません。何かの拍子に思い出す事もありますから。とにかく焦らず。こういう事は時間が解決してくれる事もありますから」

頭痛薬を処方してもらって雨宮課長と一緒に診察室を出た。
何だか気持ちが重い。

記憶喪失が精神的なストレスの可能性も出て来た。
思い出さない方がいいのかな……。

でも……。

左側に立つ雨宮課長を見上げると目が合う。

「大丈夫だよ。精神的なストレスなんて事はないから」

ポンと肩を叩いてくれる。

「本当に?」
「うん。心配事や悩み事があったら俺が聞いているだろうし。一緒に暮らしてからはなかったと思うけどな。それにバレンタインデーの朝の奈々ちゃん、笑顔でキラキラしていた。幸せいっぱいって感じだった」

そっか。笑顔だったんだ。

バレンタインデー……。
あれ? 何か大事な事を忘れている気がする。
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