雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
阿久津から宣伝部から外されると言われた時、当然納得できなくて理由を聞いた。そしたら「お前が使えないからだ」と言われた。

腸が煮えくり返るような想いをした。

阿久津が配給プロデューサーになってから、私はいい仕事が出来ていなかった。

阿久津から見たら確かに使えない部下だった。

言い返せない自分が死ぬほど悔しかった。

だから見返してやりたい。

阿久津をぎゃふんと言わせてやりたい。

だけど、今の私に何ができるだろう?

ぐびっと切子グラスに注がれた冷酒を飲んだ。

「いい飲みっぷり」と言って栗原さんが空のグラスに注いでくれる。それもすぐに飲んで、次に後藤さんが注いでくれて、それも飲んで、次にまりえちゃんが注いでくれて、だんだん意識が遠くなった。

よくわからないけど、注がれるままお酒を飲んだ。
純米酒で口当たりがよくて飲みやすい。

「中島さん、帰るよ」

もう帰る時間なんだ。
そう思って立ち上がった時、何かに滑って転んだ。

「危ない」

畳に倒れる寸前で、誰かが支えてくれた。
甘い香りがする。いい匂いだなと思って見上げると雨宮課長の顔があった。
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