雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「歩く?」

雨宮課長に訊かれて頷いた。
アルコールが入っているせいかふわふわして、まだ現実感がない。

本当にこれは夢じゃないの?

確認するように右側の雨宮課長を見る。

濃紺のスーツ姿で、今日もキリッとしていて麗しい。

しかも鼻筋の通った横顔もイケメンだ。どの角度から見ても好きな顔をしている。

雨宮課長ってめちゃくちゃ私の好みの顔しているじゃん。

今頃気づくなんて間抜け過ぎる。
なんで今まで気づかなかったんだろう?

これだけカッコ良かったら、周りの女性はほっとかないよね。秘書課の社員が取り合ったって話もありそうな気がして来る。

秘書課って言ったら美人の集まりだよね。元秘書課の栗原さんも美人だし。

だとしたら、私なんかが好きになったって遠くから見ているのが精いっぱいだし、雨宮課長が私を相手にする訳ないよね。

女性として私はイマイチだもん。

それに上司と部下だし。

「中島さんっ!」

いきなり雨宮課長に腕を掴まれて、引き寄せられた。
鼻先に雨宮課長の胸が触れる。

なんかこれって、抱きしめられているみたい。

「赤信号だよ」

少し焦ったような声で雨宮課長が言った。

横断歩道まで来ていた。
大きなトラックが何台も私たちの前を走り去っていく。

雨宮課長が止めてくれなかったら轢かれていたかも。
よそ見していたから気づかなかった。

「本当、中島さんは危なっかしい」

雨宮課長が呆れたようにため息をつく。

ああ、注意力が足りないって思われちゃった?
一緒にいて面倒くさいと思った?
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