雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
どこに行くか浮かばないまま会社の外に出た。

帝国ホテルが目につく。外国の首脳クラスが泊まる日本屈指の一流ホテル。あそこなら雨宮課長に失礼はないだろう。

今日はお礼をしたくてご飯に誘ったわけだし。
雨宮課長をちゃんとおもてなししたい。

「お腹空いたな。何食べようか」

雨宮課長がこっちを見た。

「あの、帝国ホテルでフレンチ、それとも日本料理とかは?」

「えっ」

眼鏡の奥の瞳が驚いたように丸くなった。

あれ? 外した?

「中島さん」
「はい」
「もう少し気楽な所がいいな。接待じゃないんだし」
「気楽な所ですか」

ミッドタウンの方に行けばお店は沢山ありそうだけど、気楽なお店と言われて思い浮かばない。

「中島さん、釜めしって好き?」

どうしようか迷っていると助け舟を出すように雨宮課長が言った。

釜めし?

全く選択肢になかった。

でも、美味しそう。

反応するようにお腹がぐぅ―と鳴る。

うわっ、なんで今、雨宮課長といる時に鳴るの?
聞こえたかな?

ちらっと課長の方を見るとクスッと笑っている気がする。
聞こえたんだ。恥ずかしい。
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