雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
とりあえず近くのファミレスに向かった。
雨宮課長の横を適度な距離を保ちつつ歩く。

社外で会った事がなかったから妙に緊張する。

あの映画館、僕も学生の頃からよく足を運んでいるんだよと、穏やかな声で話す雨宮課長は、社内で会うよりも柔らかい空気を纏っている。

社内ではいつも私が持ち込んだ企画に、総務でそれをするのは厳しいねとよく突き返されていたから、雨宮課長は厳しいイメージだった。

あっ、雨宮課長って背が高いんだ。

今さらそんな事に気づく。

長い手足に広い肩幅。
スーツがとても似合って、女性にモテそう。

雨宮課長って確か独身って聞いたな。

恋人はいるのかな。

恋人には甘い顔するのかな。

「うん? 中島さん、僕の顔に何かついてる?」

しげしげと課長を観察していたら、不思議そうな表情をされた。
視線が合った瞬間気まずくなる。

「あ、課長。ファミレスです」

雨宮課長を追い越して、先にファミレスに入った。
どうした訳か、ただ目が合っただけなのに脈が少し速くなる。
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