雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
森さんは佐伯リカコが撮影をしているスタジオに連れて来てくれた。
ファッション誌のグラビア撮影のようだった。

テンポのいい音楽が流れる中、佐伯リカコが次々にポーズをとっていく。

「リカちゃん、いいよ。その表情、ぐっとくるね」

カメラマンの声に応えるように佐伯リカコが表情を変えていく。

さすが人気女優。表情が豊かだし、美人だ。
スラリとした手足に、小さな顔。くびれたウエストに大きな胸は女性として完璧すぎる。年齢は35歳らしいけど、それよりも若く見える。20代の役だって出来そう。リカコさん程美人だったら私も自信を持てるのにな。憧れちゃうな。

休憩時間になり、リカコさんが控室に引き上げる。森さんに手招きされてその後を慌ててついて行った。

リカコさんの周りには森さん以外にもファッション誌の人や、お仕事関係の人たちと思われる人々が続き、大名行列のよう。みんな一斉にリカコさんのご機嫌を取り始めているようだった。

さすが人気女優。

こういう光景を初めて見た訳ではない。リカコさんとは初対面だけど、宣伝部にいた頃は人気俳優と接する事も多かった。

だから、どんな事を言えば気を引けるのかも知っている。

「リカコさん、ロバート・コッポラ監督がまたリカコさんと仕事がしたいとおっしゃていました」

ロバート・コッポラ監督はリカコさんが出演したハリウッド映画を撮った人だ。

リカコさんの視線がこっちを向く。

「あなた誰? ハリウッドのエージェント?」
「ウエストシネマズの中島です。ロバート・コッポラ監督とは二ヶ月前にお会いしました」
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