雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「じゃあ、中島さん、明日は東京駅から6:32発の新幹線ね」

夕食の片づけ後、タブレットで何かを検索していた雨宮課長が言った。

6:32発の新幹線?

うん?

首を傾げると、雨宮課長が「ぽかんとした顔も可愛いね」と笑った。

可愛いに反応してしまう。

もう、課長……。
嬉しくなる事言わないで。

顔が真っ赤になるから。

「『フラワームーンの願い』のフィルムは宮城県の仙台の外れにある映画館にあるんだよ」
「えっ! 宮城県!」
「うん。さっき問い合わせたらあるって返答があった」
「あの、雨宮課長もその映画館まで来てくれるんですか?」
「もちろん。フィルムが見つかるまで付き合うよ」

雨宮課長、やっぱり優しい。
でも、いいのかな。迷惑じゃない?

「こら。余計な心配するな」

ツンって雨宮課長におでこをつっつかれる。

「迷惑じゃないから」

課長、私の心読めるの?

「中島さん、俺に頼っていいから。中島さん一人で背負い過ぎだ。一応、これでも上司なんだからさ」

頼っていいなんて、初めて言われた。
上司としての言葉だってわかっているけど、嬉しい。

雨宮課長に抱き着いて甘えたくなった。

「という訳で明日は俺と出張だ。いいね、中島さん」

雨宮課長と出張……。

思いがけない展開に胸が高鳴った。
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