とあるヒロインと悪役令嬢の顛末〜悪役令嬢side



「——どう、して……どういう、ことですの……?」



数秒の後、やっと漏れ出た言葉は、これだけ。


「意外だな、そんなに動揺するなんて。
事情は色んなとこから聞いてるぜ。

——正直、もっと『どうでもいい』って対応されると思ったよ」

片眉を上げて、少し皮肉げに王子は言った。
アリーからも聞いたんだろうな。
最近、アリーをすごく可愛がってるから、肩入れしているんだろう。


「そんな訳ありません。
……信じて貰えないかもしれませんが、可愛い義妹(いもうと)ですのよ。

——何があったのです?」

私は、小刻みに身体が震えるのを自覚した。

あの子は、幸せになったはず。
もうすぐ、学院を卒業したら、エドウィンと結ばれて。
帝国は重婚可能だから、やろうと思えば、籠絡した攻略対象者達を夫としても迎えられるはず。

——あの子は、しないだろうけど。



「分からないそうだ。
いきなり、消えるように公爵邸から居なくなったんだと。

最後に聖女を見た使用人は、メグの部屋で涙を流しながら『ごめんなさい』と言っていたのを聞いているらしい。


——心当たり、あるか?
王国に、正式に『緊急案件』として問い合わせが来てる」


「———ないですわ。
あの子は、あそこに居れば幸せな筈ですもの……」


考えても考えても、あの子の行く先は、公爵邸か、皇宮、もっと言えば、攻略対象者、つまり仲良くしていた男性の家だ。

でも、当然国内の心当たりは捜索した筈。

そして、王国に問い合わせが来たということは……

私たちは、信用されていないということになる。

もっと言えば、『婚約者を取られた腹いせに、攫ったのではないか』と疑われている。

溜息が出るが、まぁ無理もない。
いくらでも調べて貰えば良いし、私たちに後ろ暗いところはない。



——それよりも、ミク。
何してるの、幸せにおなりなさいって言ったでしょう?———




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