とあるヒロインと悪役令嬢の顛末〜悪役令嬢side




そうやっている間に、突然閃いた。
子どもの頃を思い出していたからかも。

昔、皇太子妃教育を受けていた時。
皇宮の図書館で、禁書の閲覧を許されていた。

そこで能力(ギフト)を調べている時に記載がなかったか?

『神によって、能力(ギフト)は奪われた』と。

やはり、『能力(ギフト)』は、外す方法があるのではないか?
それも、ヒントは歴史書ではなく、神話の類にあるのでは……?


「ウィン‼︎」

突然叫んだ私に、身体をビクッとさせて、エドウィン様は腕を緩めた。

私はエドウィン様の服の胸元をぎゅっと握って、懇願した。

「お願いします、私に皇宮の禁書を見せていただけませんか?

ちょっと思いついたことがあって」

私の眸の必死さを見てくれたのだろう。
エドウィン様は真面目な表情になって、頷いた。

「大丈夫、私の権限で見せることができるよう計らう。

いつ行く?」

「……私もワイバーンに乗せてもらうこと、できますか?

出来るだけ早く行きたいです」

「わかった。じゃ、準備もあるだろうから、明日の朝出立しよう。

私は部屋にいるからね」

私の頭を軽く撫でて、エドウィン様は出て行った。

エドウィン様は、あまりによく来るので、専用の部屋を我が家に作っている。
そこで、明日の調整の手紙を書いてくれているのだろう。
伝書便——訓練された、飛行種の魔物で手紙や小さな荷物のやり取りをするシステム——だと、明日の朝には皇宮に着くはず。

私も、慌ててベルとカティに伝言を出し、侍女に旅の支度をしてもらった。
ベルとともに商会を任せている、トーマスにも連絡を取る。

因みに、トーマスはベルの恋人だ。

最初に聞いた時、二人とも必要な人材だから、軽い気持ちでは付き合ってくれるなと言ったんだけど、トーマスはベルを『絶対離すつもりはない』と断言した。

なら良い。
ベルが幸せになるならそれで。

結婚は、ベルがまだ考えられないと拒否しているが、時間の問題だろう。
トーマスは平民だが、ベルは実家の伯爵家ともほぼ絶縁状態だし、障害は少ないはず。
あっても私が粉砕するけど。


そんな事を考えている間に、立て続けにカティとベルが帰ってきた。

少し間を置いて、トーマスも。


私は事情を説明して、トーマスとベルに暫く商会のことを託した。
集中して調べないといけないから、商会まで手が回らない。

カティには、ベルはもちろんナナとアリーのことをお願いした。

無理してでも突っ走る3人を、程よく止めて欲しい。

そう言うと、カティはフワッと微笑んだ。

「お任せください、メグ。
『手綱』はきちんと取りますわ」

——うん、蒼星の会で一番怒らせてはいけないのは、カティだもんね。

この前だって、アリーを嫁にしたいから協力してくれと言ってきたワルター王子に、「遊び人はおとといきやがれ、ですわ」と追い払っていた。強い。


——うん、まあ、とりあえず安心かな。

私は、魔道具学校に出す短期休学届を手に取って、記入を始めるのだった——





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