とあるヒロインと悪役令嬢の顛末〜悪役令嬢side



次の日の朝、ワイバーンに乗って帝国に戻った。

帝都は相変わらずの賑やかさ。
でも、それには目もくれず、皇宮図書館を目指す。

エドウィン様が手を回してくれたので、すんなり図書館に入り、大机一つを占領して本を漁った。

神話と歴史書を中心に、関係のありそうなものをピックアップしてメモしていくことだけで8日かかった。

エドウィン様との約束で、食事と入浴、睡眠はキッチリ確保するため、図書館に居ることができる時間は決まっている。

これはベル達との約束でもあるそうで、私に拒否権は、無い。

朝食は必ず、昼食と午後のお茶と夕食は時間が合えば、エドウィン様と取る。


毎日私と関われるので、エドウィン様はすこぶる調子が良いらしい。


それを教えてくれたのは、皇后陛下だ。
今は、エドウィン様が視察で皇宮を空けた隙をついて、昼食をご一緒している最中。


「エドがいると、メグちゃんと食事をさせてもらえないのよ。

酷いと思わない?」


おっとりと言う皇后陛下。
妃教育でたくさん関わっていただいたので、私にとってはもう一人の母のような方だ。


ミクがいた間は、やはり父母と同じように私に無関心になっていたが、やはり父母より肝が据わっている。
父母は、いまだに私に申し訳なく思っていて、私を腫れ物のように扱うのだ。

勿論、兄も。

……まぁ、良いんだけどね。



「メグちゃんは、今、何を調べてるの?」

「神話ですわ、陛下。
昔、『神が能力(ギフト)を壊した』という記載を見たことがあって…」

「ああ、破魅(はみ)の宝玉のこと?」

「……え?」

「『破魅(はみ)の宝玉』よ。
おばあさまから聞いたことがあるわ。

昔、神様が与えた能力(ギフト)で、人々が争ったことがあったの。

だから、神様がこの世から『能力(ギフト)』を消した。

その時に使ったのが、『破魅の宝玉』と言われる、宝珠よ。

西のダンジョンの奥深く、竜に守られし湖底にあるとされているわ」


——本当に?

私はごくん、と唾を飲み込んだ。

「それは、どういう神話なのですか?」


「市井のお伽噺よ?確か絵本にもなっているわ」

「え…でも『能力(ギフト)』は秘匿されて……」

「『現在も存在している』ことは秘匿されているわ。
だからこその『お伽噺』ね。

民にはお伽噺として残っているけど、貴族は、300年位前に緘口令が出てからはそれを話題にすることはほぼ無いわ。かえって今は貴族の方が知らないかもしれないわね。

——もし、市井で特異な能力を持つ者が現れても、『全く存在しないもの』だと大騒ぎになるけど、『似たようなもの』だと、あまり騒がれないものだと、おばあさまが言っていたわ。
だから先人達は、お伽噺として曖昧に情報を残していたのかもね。

貴族に現れた場合は、身内のことは自力で守ったり隠したりするから、あまり外に情報が出てくることは無いわね。
利用しようとしても、神殿から手が回るしね。

…そうよ、発覚して暫くは、神殿の監視がつくの。
監視が外れてからも、定期的に調査がなされるわ。

——勿論、大きな力を持つ能力(ギフト)なら、神殿がすぐに理由を付けて取り込むわ。

大騒ぎになる前にね」





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