真夏の夜の夢子ちゃん

洸平 11歳

洸平(こうへい)は、毎年お盆の時期に訪れる祖父の家が嫌いだった。

母親の実家なのだが、昔ながらの日本家屋で迷子になりそうなほど広い。
エアコンがなくて暑いし、Wi-Fiも繋がらない。しかも大きな仏壇がある座敷には、死んだ人の写真がたくさん飾ってあって不気味すぎる。

家の周りも畑ばかりで、コンビニすらない。この町の人たちはどこで買い物をするのだろうと心配になるほど田舎だ。

今年の夏休みも、洸平は母親と一緒に祖父の家にやってきた。1週間滞在する予定だ。

それこそ小さい頃は、蝉を捕まえたり川で魚を釣ったりして過ごしたが、小学5年生にもなると、もはやそのようなことには興味が湧かない。

だらだらと過ごして3日目の夜、母親が蛍を見に行こうと誘ってきた。

「蛍?」
「近くの川に集まってくるの。すごく綺麗なのよ。」

蛍なんてただの虫じゃないか。
気持ち悪いだけ。

そう思ったが、家で祖父と二人きりになるのは耐えられなかったので出掛けることにした。

祖父は無口で笑った顔を見たことがない。いつも首にタオルを巻いて、一日中、外の畑で作業をしている。
父親が仕事を理由にここに来たがらないのもよくわかる。
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