ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!2
 笑い飛ばされてしまうだろうか。いや、今はそんなことを考えている場合じゃなかったと首を振る。
 ふたりが入った部屋で立って待っていた女性は、ふたりの姿を見るなり、その場で頭を下げた。

「お待ちしておりました、陛下――そして、聖女様」

 シアより三十ほど、年上だろうか。アンセルムの母といっても、通りそうな年齢である。深く皺の刻まれた顔。ごつごつとした手――労働する人の手だ。
 身に着けている品も、清潔感はあるがさほど高価なものではなかった。本来なら、王宮に出入りできる身分ではないのは明らかだ。

「聖女様。面会を許してくださり、感謝いたします」
「あああ、あの、その。顔を上げてください。それから、面会を許すとか許さないとか……そういうの、私ちょっとよくわからないので」

 シアの言葉に、相手はゆるゆると頭を上げる。
 シアと目が合うと、彼女は少し、ほんの少しだけ口角を上げた。

(……あれ?)

 彼女の姿に見覚えがあるような気がする。
 どこで会ったのか思い出せず、シアは首を傾げる。初対面のはずなのに、どうして見覚えがあるのだろう。

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