離婚前提から 始まる恋
夫婦の危機

はじめてのケンカ

7月の終わり。あと半月もすればお盆の時期。
今年は勇人と二人で実家に帰省して、納涼祭りと称した父主催のパーティーへ参加する約束になっている。
母に言われて断れなかったとはいえ、里佳子さんへのわだかまりが消えたわけではないし、ここのところ忙しい勇人とは会話どころかほとんど顔を合わせていないから、本心では2人で実家なんて行きたくはない。
それでも勇人が行くと言えば断ることもできず・・・
はぁ、困ったな。

「どうしたの若狭さん、元気がないね」
重役会議から戻る途中、後ろ歩いていた私を尊人さんが振り返る。

「申し訳ありません」
仕事中にうわの空だったことを反省し、頭を下げた。

「次の予定までに時間があるから、部屋に戻ったらコーヒーでも淹れてもらおうか?」
「はい。頂き物のお菓子もあるので一緒にお持ちしますね」
「君の分も煎れて、部屋まで持ってきてくれる?」
「承知しました」

仕事中に考え事なんて秘書失格。
尊人さんのことだからお説教をされるとは思わないけれど、さすがにバツが悪い。
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