離婚前提から 始まる恋
私にしては珍しく怒った顔をしていると自覚がある。
普段あまり感情を表に出さない分、不機嫌な時はすぐにわかると母からも言われる。
だからこそ、常に感情的にならないようにと意識しているのに・・・

「何で花音が怒るんだよ」

勇人にも私の不機嫌は伝わったらしい。
でも、今はそれを取り繕うだけの心の余裕がない。

「花音はそうやっていつも逃げるんだな」
「別に逃げてなんて・・・」
「じゃあ、思っていることを言ってくれ。俺は花音の本心が聞きたい」

真っすぐに視線を逸らすことなく私を見る勇人。
ただでさえ彫りの深い精悍な顔立ちをしているから、その迫力も半端ない。
いつもの私なら、逃げ出すか泣き出したのかもしれないけれど、今はそんな気にはならない。

「勇人ずるいよ。人に聞くなら自分から言うべきでしょ」
私だって、勇人が今何をどう思っているのかが知りたいんだから。

「確かに、そうだな」

勇人は引き締まった表情のまま、少しだけ姿勢を正した。
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