離婚前提から 始まる恋
「正直結婚なんて現実味がなさ過ぎて、女性と暮らす自分を想像することもできなかった。それに、結婚までの期間が短かった分戸惑う気持ちも大きかった。花音もそうだったんじゃないのか?」
「そうね」
男の人と暮らすってことの意味を考える時間もないまま結婚してしまったし、交際期間も短かったから、はじめは緊張の連続だった。

「でも俺は、花音との暮らしがすごく快適で、楽しかった」

もちろん私も楽しかった。
たとえ勇人の気持ちが私のもとになくても、隣にいられるだけで幸せだった。

「自分勝手だと思うけれど、このまま一緒にいられたらなと思っていた」
「それは・・・」

私だって、これからもずっと勇人と一緒にいたい。
でも、好きになればなるほど欲が出て勇人を独占したい気持ちは強くなる。
里佳子さんの影がちらほらするたびに不安になったり、何の力にもなれない自分に落ち込んだりするのはもうたくさん。
そんな事ならいっそ、勇人から離れる方がいいのかもしれないと、やっと決心をしたのに・・・

「花音、俺たちはやっぱり離婚するのか?」

変な質問だなと思いながら、私は勇人を凝視した。
もう逃げられない。
思いを伝えるのも、この現状に踏みとどまるのも今が最後。
今ここで、「別れたくない」と言えばこれからも一緒に暮らせるのかもしれない。
でも、そんなことをすれば私はずっと勇人と里佳子さんを恨んだまま暮らすことになる。

「その方が、お互いのためだと思うわ」
私はいつの間にこんなに上手な嘘がつけるようになったのだろうと思うほど、はっきりと答えられた。

「わかった」

肩を落とした勇人の落胆の表情に、少しだけムッとした。
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