離婚前提から 始まる恋
「おはよう」
「お、おはようございます」

いつもより30分も早い尊人さんの登場に驚いた。

「随分早いですね」

普段は尊人さんの登場に会わせてコーヒーを準備するけれど、こんなに早いとは思っていなくてまだ準備できていない。

「最近仕事が溜まり気味だし、今日は来客の予定もあるから朝のうちに仕事を片付けようと思ってね」
「すみません。私が長期のお休みを頂いたから…」

父の選挙のために1週間も休んだから、迷惑をかけたんだ。
そう思うと申し訳ない気持ちでいっぱい。

「何を言っているの。選挙の日程が決まってから、この休みを取るためにずっと残業して仕事を片付けてくれたじゃないか。それに秘書課の人間は君だけじゃないんだ。MISASAは一人が休んだからって回らないような会社じゃないはずだろ?だから、気にしなくてもいいんだよ」
「でも・・・」

確かに、秘書課には20人ほどのスタッフがいる。
半分はそれぞれ担当を持った役員専属の秘書で、それぞれ担当役員室の隣にある専用の秘書室で業務を行う。
残りの半分はチーフや課長などの管理職と担当を持たない秘書。普段は役員フロア内にある秘書室で事務作業をしていて、お休みが出たり人手が足りないときにはそのフォローに入る。
私が休んでいる間も、秘書課長と今は育児のために時短勤務をしている先輩がフォローに入ってくれたはず。大きなトラブルはなかったって聞いたけれど・・・

「何か手伝いますか?」
「うん、コーヒーをお願いできるかな」
「はい」

持っていた書類を一旦置いて、私は給湯室に向かった。
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