離婚前提から 始まる恋
「花音、あれから拓馬君に連絡してないでしょ?」
「そう言えば・・・」

すっかり忘れていた。
杏にもらった連絡先も寝室の机にしまったままだ。

「あの時、拓馬君に告白されたんでしょ?」
「うん、まあ」

確かにそれらしいことを言われた。
もちろん私は『男性としてみることはできない』と断ったけれど、それっきり一度も会っていない。

「いくら旦那さんのことが好きでも、告白した男性のことも思い出してあげなさいよ」
「だって・・・」

それじゃあ拓馬君がかわいそうでしょと言いたそうな杏だけれど、そもそも既婚者と知りながら告白する拓馬君に問題があると思う。
ただ、当時の私は勇人とうまくいっていなくて、かなり悲壮感漂う顔をしていたんだろうなって自覚があるから、私の責任でもあるのだけれど。

「拓馬君もかなり心配していたから、花音からの連絡がなくてショックだったみたいよ」

そうか、それは悪いことをしたなあ。って、
「何で杏がそんなに詳しいのよ」
「それは・・・」
ゴモゴモと言い淀む杏。

あれ、何か変だぞ。
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