離婚前提から 始まる恋
「実はね、私、拓馬と付き合い始めたの」
「ええー」

突然の告白に、私の声も大きくなった。
これはびっくり。
あまり恋愛に興味のない様子だった杏に彼氏なんて、それも拓馬君が・・・

「正直言うと、2人で花音の話をしていて意気投合したのよ」
「へー、そうなんだ」

一体私の何について話していたのかを想像すると怖い気もするけれど、幸せそうな顔の杏に少しホッとする。

「だから、拓馬君はもうあきらめてね」
「え、そんな、私は別に」

愛する勇人がいて、やっと思いが通じたばかりなのに、他の男性を好きになるなんて考えられない。

「今度3人で食事にでも行きましょう。そうだ、旦那さんも誘って4人ってどう?」
「いや、それは・・・。ほら、勇人も忙しいし、私も妊婦であまり人込みには出たくないし」

拓馬君の名前が出ただけで嫉妬心を燃やす勇人が一緒に行けば大変なことになりそうで、私はそれとなく断った。

「そうか、それじゃあ仕方ないわね。ところで、仕事はこのまま辞めるの?」
「うーん、まだ迷っているのよ」

妊娠発覚と共に悪阻が悪化し、ドクターストップで3週間の自宅療養となった私はその後も用心して仕事を休んでいる。
さすがにこのままではいけないと思ってはいるけれど、ズルズルと今日まで来てしまった。
< 206 / 233 >

この作品をシェア

pagetop