離婚前提から 始まる恋
「今のところ専務には秘書課長が付いていてトラブルは起きていないようだけれど、そのうちに誰かが担当につくだろうってもっぱらの噂よ」
「そうでしょうね」

忙しい尊人さんに専属の秘書がいないでは仕事が滞ると思う。
私も産後しばらくは働けそうにないし、何とかしないといけないだろうな。

「それと、これ見た?」
「え、何?」

杏が差し出したスマホの画面に映る尊人さん。
少し離れたようなところから撮った隠し撮りのような写真だけれど、問題は尊人さんの隣に映る長身の女性。
ただの知り合いにしては距離が近くて、明らかに尊人さんの連れ。
写真は後ろ姿しか映っていないけれど、かなりスタイルのいい美女だ。

「専務の彼女だろうってもっぱらの噂よ」
「へえー」

なんだか人ごとみたいに言ったけれど、尊人さんのお相手ってことは私にとって未来のお姉様候補。興味がないと言えば嘘になる。

「花音が知らないなら、お見合い相手とかではないようね」
「うん、勇人からは何も聞いてない」

尊人さんのお相手ってことは三朝財閥の奥様になる人。
次男である勇人以上に顔も名前も知れている尊人さんの奥様になる人は、きっと大変だろうな。

「ネットではかなり拡散されているみたいだけれど、一体誰かしらね」

お見合い相手でないなら尊人さんの彼女ってことだから、身近にいる人なんだろうと思うけれど・・・
ん?
私は写真に写る女性の着ている服に目を止めた。
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