離婚前提から 始まる恋
感謝のss
5月。
花音は男の子を出産した。
生まれた息子は、三朝家にとっても若狭家にとっても初孫になる訳で、両家のジジババの盛り上がりと言ったら半端ない。
4人で競い合うようにおもちゃやベビー服を買い込んでいる。

「ねえお父さん、生まれたばかりの子に靴を買ってどうするつもりなのよ」

退院の日。
わざわざ迎えに来てくれたお義父さんが両手に抱えた荷物に、ベビードレスを着た息子を抱く花音が困惑した様子。

「大丈夫すぐに大きくなってこの靴を履いて走り回るようになるから」
「そんなこと言ったって・・・」
暴走気味のお義父さんに花音も困り顔だ。

暴走で言うと、うちの両親も負けてはいない。
すでに三輪車やブランコが実家に届いているのを俺も知っているし、さすがに俺に見せると怒るからって理由でマンションに持ってくることはしないが、実家の部屋が1つ息子の荷物で埋め尽くされているって兄貴からも聞かされている。

「勇人君、花音はこのまま家に連れて帰るつもりだが、君も来るかい?」
「いえ、僕は・・・」

たまたま退院が土曜日になったからと言って、花音の実家について行くほど暇な身分でもない。
もちろんもう少し一緒にいたい気持ちはあるが、今日は我慢して送り出すしかないだろう。

「どうせ来週末には来るんだろ?」
「ええ、両親と一緒に伺います」

一週間後は両家が花音の実家に集まって、息子の命名式を行うことになっている。
すでに名前は『理人(りひと)』と決めているが、花音とも相談して両家が集まった席で発表することにした。
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