離婚前提から 始まる恋
仕事第一に生きてきた俺にとって、今が正念場。
この会社にとっても大幅に収益をあげられる絶好のチャンスで、本来ならどんなことをしても会議をすっぽかすなんてできないが・・・

「ったく、あれだけ無理はするなと言ったのに」
速足になりながら、つい愚痴が出てしまった。

「何かあれば電話します。絶対に携帯を切らないでください」
「わかった」

普段は大きな声なんて出すことのない里佳子が、廊下の向こうから叫んでいる様子に危機感を感じながらも俺は手を振ってから走り出した。

経営陣として、多くの社員を抱える企業の役員として、無責任な行動なのはわかっている。実の叔父にあたる常務が切れ者で、秘書の里佳子が有能なことに甘えているのかもしれない。
二人がいてくれれば大丈夫。
そう思うからこそ、俺は駆け出した。
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