離婚前提から 始まる恋
「いくら眺めがいいオシャレなマンションでも、ジャージ姿でお茶漬けを食べていたんではどうしようもありません」
日常生活の中で眺める景色と、オシャレをして非日常の空間で見る風景はやはり違う。

「花音ちゃんのジャージ姿か・・・」
フフフと笑いながら尊人さんの視線が私を上下した。

「ヤダ、想像しないでください。毎日ジャージって訳ではありませんからね」
「はいはい」

珍しいな、普段からまじめな尊人さんが今日はやけに上機嫌で軽口まで飛び出す。
まあ、3年もかけて手がけてきたプロジェクトが無事完結したんだからうれしくて当然か。
実際さっきからお祝いを言いに来る来賓が後を絶たないし、一通り挨拶が終わり隅のテーブルに移動した後も、グラスに口を付ける暇もないくらい声がかかっている。

「三朝専務、本日はおめでとうございます」
ほらまた、取引先の社長さんがやって来た。

「わざわざおいでいただきありがとうございます」
いつも通りにこやかに応える尊人さん。

以前から親しくしている取引先だけに話が長くなりそうで、私は邪魔にならないようにと少しだけ距離をとった。
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