離婚前提から 始まる恋
あまり人前に出るのが得意でない私とはいえ、秘書なんて仕事をしていればパーティーに出席することも少なくない。
とくにMISASAの手掛けた事業であれば、同行しないわけにはいかない。

「若狭さん、大丈夫?疲れてない?」
「あ、課長」

尊人さんから少し離れた場所にいた私に声をかけてきたのは、上司である秘書課長。
少し前に病気休養でお休みをもらったばかりだから、何かと気にかけてくれている。

「無理はしないでください」
「はい」

父の選挙のために休暇をとった後すぐに倒れてしまいそこから10日間も休んでしまったから、私だって休み明けで出勤するときにはかなり緊張していた。
もしかしたら何か言われるのかもしれないとドキドキしていたけれど、特に何もなく不思議なくらい静かに職場復帰を果たした。
そこにはきっと尊人さんと秘書課長の気遣いがあって、事前に秘書課の仲間に話をしてくれたからだろうと思う。

「今日は長くなりそうだから、疲れたら抜けてもいいので、遠慮なく声をかけてください」
「ありがとうございます」
と返事はしたものの、三朝財閥の事業である以上、今日のホスト役はMISASAをはじめとする三朝財閥の関連会社。
多少のことで抜けることはできない。
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